研究テーマ

ヒトはどのようにして外界や自己を認識し、所望の運動を発現しているのでしょうか?運動調節機構を理解することで、病態生理の解明へつなげていきたいと考えています。
ヒトの運動調節機構を知ろうとするとき,運動指令の源となる大脳皮質,皮質脊髄路,脊髄運動ニューロン,末梢感覚神経からのフィードバック,といった神経路が研究対象となりますが,動物実験でおこなわれるような急性実験やラジカルな手法を採用することは困難です.そのため,頭表から脳波・脳磁波,筋肉近傍の皮膚表面から筋電図などを記録し,多くのニューロンの活動の様子をマクロに捉える手法が一般的に用いられています.
これらはニューロンの活動電位を直接計測しているわけではないので,「ヒトの研究は動物実験のような細かい研究ができない」と思われがちですが,必ずしもそうではありません.信号処理技術を上手に使うと,空間的にはmmオーダー,時間的にはmsオーダーで脳の活動源を特定することができます.また,筋に注射針のような電極を刺入するとスパイク状の筋活動電位が記録でき,これは筋線維をコントロールしている脊髄α運動ニューロンの活動タイミングに同期していることから,無麻酔・低疼痛で単一運動ニューロンの活動様態も測定できます.
わたしたちは理工学の強みを活かして,ヒトの神経情報を解析しようと考えています.最近の興味対象には以下のようなものがあります.
■ 運動皮質がどのように筋をドライブするのか (コヒーレンス解析,経頭蓋磁気刺激)
■ ニューロンの新しい情報コーディング理論 (Frequencygram・点過程スペクトル)
2005年、高橋裕司君(当時修士1年)が国際学会でYoung Investigator Awardを受賞!
■ 脊髄神経回路の同定 (トリガモードPSTH,H波コンディショニング検査)
2004年「臨床神経生理学」奨励論文賞を受賞!(共著)
これらの研究を通して学べる内容としては,ヒト生理学,筋電計・刺激装置などの電気回路設計,外部機器の制御・データのリアルタイム処理などのI/O関係を含めたソフトウェアエンジニアリング,計算機シミュレーション,統計学,などです.一つの分野にだけ卓越した知識を養う,というよりも,マルチな知識を習得し,それらを有機的に使いこなせるようになるカリキュラムを提供したいと考えています.